受験生の皆さん、お疲れさまでした。
受験生を支えてこられた保護者の方々、お疲れさまでした。
「今年の問題はどうだったのか?」「周りはできているのか?」気になってしまうと思います。
しかし、力の限りを尽くした受験生諸君は、まずは頭を空にして、ゆっくり休んでください。
それでも、どうしても気になるという都立高校受験生のために、当塾の独断と偏見に満ちた問題分析を掲載させていただきます。
当記事は、受験生や受験生の保護者の方に読んでいただくために執筆しておりますが、講師陣の研鑽の場でもあります。これから当塾で高校受験をされる方々のために私たちは常に最新の入試問題を研究し、指導内容に反映させるべく精進しております。毎年、予想平均点ピタリ賞を狙いつつ、好き放題に論評しつつ、都立高校入試に対して研究を深めております。ここに掲載されていることは、当塾の独断と偏見の塊であることをご理解のうえ、お読みください。
とはいえ、昨年度の当塾予想平均点は5科合計317点(実際は316.2点)で誤差0.8点でした(科目別に見ると英語と理科の誤差が1点未満、最大誤差でも数学の3.4点)。概ね的中と言える実績がございます!好き放題に書かせていただきますが、真剣にやっております!!

【概要】
5教科全体としてはかなり易化しています。昨年度も都立高校の平均点が公表されている平成15年度以降、2番目に高い316.2点でしたが、今年度は更に平均点は上昇して平成30年度の史上最高平均点323.4点を6年ぶりに更新する見通しです(当塾では330点と予想しています)。当塾の都立共通問題の自己採点(講師チェックあり)の平均点は402.4点であり、当塾創業以来の最高点でしたが、易化の影響もあったと分析しております(なお、当塾では入塾の際に入塾テスト等一切の選別を行っておりません。入塾希望者は全員受け入れるスタイルで運営しています)。それにしても、塾内平均400点オーバーは完全に想定外のことでした。塾生の皆さん、よくやった!!詳細は教科ごとの分析をご覧いただきたく存じますが、今年度は例年よりも特別難しい教科はなく、例年並み~例年より易しい水準の教科ばかりでした。
「いつもよりできた!」と思って帰ってきた受験生の方には本当に心苦しいですが、周りの受験生もできています。昨年度のボーダーラインで計算して合格発表を迎えると絶望が待っているかもしれません。覚悟を持って発表に臨んでください。
しかし、受験生諸君にお伝えしたいのは、「いつもよりできた!」という答案を出してこられたのは、入試日まで努力を続けた証である、ということです。たとえ周りの人もそうだったとしても、君が頑張って結果につなげた事実は揺るぎません。合否によらず、そこは自分を褒めてあげてください。そして、この受験経験が皆さんの今後の人生において財産となることを願っています。

【予想平均点】
英語 68(昨年度62.8)
数学 62(昨年度57.6)
国語 77(昨年度80.8)
理科 67(昨年度59.4)
社会 56(昨年度55.6)
合計 330(昨年度316.2)

【教科別分析・コメント】
英語 易 予想平均点68点
今年度は昨年度(平均点62.8点)から易化し、平均点は68点を予想する。
出題形式は例年通りである。設問の難易度はやや易~標準レベルだった。今回の長文問題では、similar、focus on、variousのような例年と比べてレベルが高い(と筆者が判定している)語彙が出題されたため、単語力に自信のない受験生は苦戦したかもしれない。しかし、大問4の語数が昨年と比べて減少したことや全体的には解きやすい問題が多かったことから、今年度の問題は、中~上位層には得点しやすい問題だった。当塾塾生の自己採点平均は、84.0点だった。単語力が十分であった塾生が多かったことから、過去問題演習のときよりも高い得点をとれた塾生が多かった。特に、英検準2級以上の取得者にとっては、例年よりも易しく感じたようである。なお、単語レベルの引き上げは指導要領改訂の影響でよるもので、今年度だけで終わる偶発的な現象ではない、とみている。今年度の受験生は新課程完全移行の学年にあたっている(小学高学年から英語が必修化され、中1から新課程の教科書を使用)。新指導要領では、中学卒業時点で2000語を超える語彙力を求めている(旧課程では1200語だった)。今年度の問題では1500語程度の語彙力が求められており、来年度以降さらに高い英単語レベルの出題となる余地を残している。これからの都立受験生は、これまでであれば注がついていた単語に注がつかなくなると覚悟しておくべきだろう。
以下、大問別に分析する。
大問1:標準
直接音声を聞いたわけではないが、塾生の正答率とリスニングテストの台本に基づき、難易度は標準レベルと推定する。5問中、記述問題を除く4問正解を目標としたいが、問題Aの対話文3の問題が分量が多く、難しかった。いずれの問題も選択肢の語句のほとんどが放送文の中で言及されているので、何が問われているのかを正確に理解することが重要だ。今年度の試験も質問を正確に聞き取れれば、記述以外の4問は正解できるだろう。
問題B Question2は、上位の受験生でも差がつくリスニングの記述問題だ。今回の質問はWhat does the zoo want people to do for the new rabbit?であった。これまでの過去問を振り返ると、「want+人+to動詞の原形」の質問が度々出題されており、最近では2023年度や2021年度で同様の質問があった。文章で回答すると、wantの目的語を抜かしたwant toのような誤答が多くなるので、模範解答にあるto give it a nameのようにto以下だけの最小限の回答ができるよう練習しておきたい。なお、記述問題対策として、英語を聞いて書き取る「ディクテーション」という訓練が有効だ。今回の問題でも質問を正確に理解して、該当箇所の英文を的確に書き取れれば完答できた。
大問2:標準
大問2の図表の読み取りは、都立入試の英語の中で最も読解力を要する問題と考えている。この問題は、論理的思考と細かい情報の読み取りが求められるため、上位層の受験生でも失点したり、時間をかけすぎたりすることがある。英語が苦手な受験生は、この大問2の1と2を後回しにして大問3と大問4に集中した方が高得点につながるかもしれない。「時間を多く費やしたにもかかわらず失点してしまった」という悲しい事態が発生するのが大問2の1と2の特徴だ。
今年度の大問2の1は (B)の選択肢を選ぶために、前半の情報を参照する必要があった。空欄(A)と(B)が両方とも後半にあるため、その周辺だけを読んでいると根拠を見逃してしまう。例えば、(B)の選択肢Ramen Restaurant AかBを選ぶためには、両親がどのターミナルに到着するかを確認しなければならない。その情報が書かれているのは、序盤にある最初のOliverのセリフだ。別の過去問では、正解の根拠が一番最後に書いてあることもあったので、空欄の場所にかかわらず最初から最後まで丁寧に読むことが求められる。
今年度の英作文は、「心が動かされたもの(a thing that moved my heart recently)」についてだった。moveという単語を「(心)を動かす」という意味で捉えられず、直前の歌舞伎について誤った回答をしてしまった受験生もいたかもしれない。英作文対策は、過去問や模試で出題された内容を繰り返し解き、自分の英作文をすぐに書ける状態にしておくとよい。今回と似たテーマとして、平成24年度の「友人に伝えたい感動した出来事」があった。また、平成23年度の「あなたが困っているときにだれかに助けてもらったこと」も今回のトピックに応用できるだろう。
このように、過去問の中には文章の書き方や構成をそのまま応用できるものもあるから、過去問演習を通じて、自分の英作文を事前に用意しておきたい。
大問3:標準
冒頭にも述べた通り、語彙レベルが例年より高かった印象を受けた。例えば、shelves、similar、broadcastingなどは受験生によっては難しいと感じたかもしれない。出題形式と難易度は概ね例年通りだが、大問3の問6は問題形式が昨年度から少し変わった。本文の内容に合うように空欄を補充するという点は共通しているが、適切な文章の組み合わせを補充する昨年度の形式に対し、今年度は文中に1語を補充する形式だった(2021年度と同じ)。今年度の方は、設問内で読む英文の量が少ないので、その分簡単に感じたかもしれない。その他の問題は例年通りで、難易度も標準レベルである。いずれの問題も指示語に注意して下線部の前後を丁寧に読めば、解答の根拠を見つけることができる。
大問4:やや易
大問4も大問3と同様に、語彙レベルがやや高かった印象を持った。例えば、variousは比較的レベルが高い単語であるし、読解を妨げるものではないが、cows、sheep、crane、cabbage、green peppersなどの日常単語につまずいた受験生もいただろう(小学生や中学1年生でも習うが、登場頻度が少ないので忘れがちだ)。
出題形式は例年通りで、難易度は標準レベルだが、問3の(2)と(3)で細かい読み取りが求められた。昨年と比べて語数が少なかったことが今年度の特徴の一つだが、一般的には大問4は英文の量が多いため、大部分の受験生は時間との戦いとなる。しかしながら、常に時間に追われていた塾生たちも今年度の問題は「いつもより時間に余裕があった」と言う者も少なくなかった。以上から、大問4の難易度は「やや易」と評価している。
数学 例年並み 予想平均点62
今年度の数学は昨年よりも点数が取りやすい設問が多く、平均点も昨年度よりは若干高い62点と予想する。
出題の形式は毎年変わらず、問題構成や配点も例年通りの出題であった。
今年度の数学の問題に関して、箱ひげ図に関する問題が初登場したことが話題となっているが、非常に簡単な問題であり、戸惑った受験生も少ないように思われる。
その他特に変わった点もなく、過去問の演習を繰り返し、複数回模試を受験していた当塾の生徒にとっては見慣れた解きやすい問題だったといえる。
良くも悪くも毎年毎年同じような問題で同じようなミスの誘発があり、同じような解き方をミスなく行うことが求められる試験問題であり、いかに過去問や模試を繰り返し解いてきたかが問われる試験であった。
大問3・4・5の最後の設問は難しい問題が出題されがちだが、今年度の問題はどれも『捨て問』と言えるほどの難しさはなく、上位校志望者であればどれもトライする価値のある問題であった。
例年は数学で90点以上を取れた受験生の割合は1~3%程度であるが、今年度に関しては5%以上いても不思議ではない。特に、上位校志望者で数学を武器としている受験生は90点以上取りたい出題内容であった。
当塾おいては、数学を苦手教科とする塾生が多い中、自己採点の平均点が76.0点と75点を上回ることができた。これは都立高入試の過去問を繰り返し解き、間違えた問題を解き直すという作業を何十回と繰り返してきた塾生の努力の結晶である。
以下、大問別に難易度を提示し分析する。
大問1:標準
問1のー6²や問2の分数の前の-など例年通りではあるが今年度も計算ミスを誘発する問題をしっかりと織り交ぜられていた。しかし、過去問や類題による演習を繰り返し対策していた受験生にとってはミスなく全問正解可能である。ここで失点してしまうと、合否に非常に影響が出やすい。ちなみに問2の多項式が分数でかつ分数の前に-の符号が付いているのは4年連続である。
前述の箱ひげ図に関してはハズレの選択肢が明らかな誤答であるため、正解の「四分位範囲」について何も覚えていなくても簡単に正解できる出題であり、場合の数や確率、標本調査で得点を取るために対策をした受験生からしたら残念な出題だった。このレベルであれば箱ひげ図についての理解があいまいな生徒であっても正解してしまう。ほぼ全員が正解していると思われるので、今年度の入試与える影響はほぼない問題だが、新課程に完全移行した最初の学年で、新課程内容を簡単な問題で出した、ということの意味は小さくない。「データの分析と活用」「データの比較」についても、出題していくことを方針を示すものだ。今後の受験生は、今年度ほど易しい問題ではなく出題される前提で学習しておく必要がある。
大問2:標準
例年通りの出題内容。問1は非常に簡単な問題であった。問2の証明問題は昨年よりは難しい問題であったが少なくとも2種類の四角形の面積を文字で表すことで部分点は取りたい内容。
大問1と同様で過去問などで演習を繰り返し行うことで得点できる出題内容であった。
大問3:やや易
例年通りの出題内容。問1は2次関数の変域の典型問題であり、最小値が0になることを見落とさなければ間違えることは想定されない。問2は問題文の意味を正しく読み取り点Qの座標や点Aの座標が正しく取れないと解けないが、これも過去何度も出題された問題であるため、やはり過去問の演習が有効な対策であると言える。
問3は例年通りの出題で定石通り、点Pのx座標を文字で置き、文字を使って考えることができれば解ける典型問題であった。
大問4:標準
問1は例年同様角度を文字で表す式を選ぶ問題で難易度も例年並み。
問2の証明が昨年よりは書きにくくなっており、シンプルに書こうとしても長くなってしまった受験生が多くいたと思われる。ここも大問2の証明問題同様に完成しなくても部分点は確実にとりたい。
大問5:標準
問1で近年は動点の問題や長さを問う問題が多く出題されていたが、6年ぶりに立体の中の角度を問う問題が出題された。空間図形を見ることに慣れていないと難しい問題ではあったが、45度か60度か90度のいずれかであることは明白なので正答率は低くないと思われる。問2はこの大問5の問2で過去出題されたどの問題よりも簡単であった。最終問題は難しいからと捨てることなく、少し時間をかけて問題を解いてみたら解けた受験生も多かったと思われる。

国語 例年どおり易 予想平均点77点
塾生の自己採点結果は、半数以上の生徒が90点以上であった(作文については、答案内容の申告から講師がやや厳しく採点)。明らかに易しい出題内容であったと断言できるが、昨年度が恐ろしく易しく平均点80点以上であったことから易化とは言いがたい。このままこの難易度で定着させていくのだろうか・・・一応「例年並み」という難易度評価としたい。都立高校入試史上、国語の平均点が80点を超えた年は、昨年度と4年前の2回あるのだが、塾生の半数以上が90点以上となる現象はそれら2回と今回で3回目だ。5年間で3回となると、もはや珍しい現象ではない。今後、どの難易度を目安に都立対策を実施すべきなのか正直言って戸惑う。そして、共通問題上位校で国語を得意とする受験生には同情を禁じ得ない。そのような受験生が当塾にもいたわけだが、上位校受験生はほぼ全員が95点前後だろう。そうすると、得意な国語でリードを取ることができない(120点は取れないのだから・・・)。もはや、入学選抜試験として機能不全なのである。そして、この「機能不全」に救われている受験生もいるわけだが。
平均点80点以上だった過去2回(昨年度と4年前)と比較すれば、「全員が正解できるわけではないな」という問題が多少見られたことから、平均点は80点を僅かに下回ると予想する。
以下、大問別にコメントする。
大問1・2:易
漢字の出題だが、当然満点を取ることが求められる。特に今年度は易しかったという声が聞かれるが、その通りだろう。中学入試と高校入試で区別がつかなくなる漢字出題はそろそろやめてほしいと思う。差が生じるように漢字の出題難度をグラデーション化すべきだ。以前はそうなっていたと思うのだが。難易度のことはさておき、今回は都立高校入試問題オタクとして非常に注目したことがあるので記したい。
書き取りで出題された「洋館」と「客室」である。実は、これらは全く同じ問題が近年出題されているのだ。「洋館」は現在市販されている過去問題集にも収録されている7年前のH29(2017)年度の出題だ(声の教育社の東京都立高校過去問題は7年分収録されている)。「客室」は、そこからさらに3年遡るH26年度に出題されている。このような短いスパンで同じ漢字が出た例は近年になく、大変驚いた。今年度の作問過程において過去の出題歴確認を漏らしたために起きたことかとも疑ったのだが、おそらくそうではない。目的は不明(学力の定点観測、過去の正答率との比較のため?)だが、わかったうえで出題しているはずだ。今年度は「大正時代に建設されたレンガ造りのヨウカンを訪ねる。」という問題で、7年前は「明治時代に建てられた、れんが造りのヨウカンを訪ねる。」という問題だった。比べていただいてどうだろうか。この構文一致は、偶然の産物にしてはできすぎている。なお、この設問の7年前の正答率は66.0%であり、3人に1人が外している計算になる。しかし、この出題以降「洋館」が都立入試対策問題集や都立入試向け模試等で、以前より出ているように思うので、今年度の受験生はこの正答率を確実に上回るだろう(購入した7年分の過去問題を全てやり切っている受験生もいるはずだし)。
オタクの長話はこのへんにして、これからの受験生へ2点アドバイスしたい。
①過去に出た問題でさえ再度出題されているのだから、「もう出ないよね」と安易に考えず、出会ったものは全て覚える、という姿勢で日々学習すべし。当塾で模試の復習をさせていても、再度同じものができないという生徒を残念ながら見ることがある。できなかったものは、「伸びしろ」です。「伸びしろ」のまま放置せず、しっかり伸ばしてください。高校生になるのにふさわしい、漢字・語彙力を受験勉強の過程で身につけてほしい。
②丁寧に書くべし。「小学生ではないんだから…」という声が聞こえてきそうだが、毎年塾生の漢字を採点していると、線が突き抜けているか否か等で×をつけるという場面が非常に多い。書いた本人は正解と同じものを書いているつもりでも、×になることは多々ある。美しい字である必要はないが、一画一画正確に採点者に隙を作らない字を心掛けること。もちろん、練習のときから意識することで正確に覚えることにつながる。「大体の形はわかっているのに、細部まで正確に書けるようにならない」という人は、大きく、ゆっくり書いて練習しましょう。
大問3:易
いかにも都立高校入試らしい、ポジティブな心情変化が描かれる小説だった。
共通問題の小説は、物語を抽出するということを意識することで苦手な生徒でも得点が伸びると考えている。
当塾では、入試における小説問題の解法として、執筆者が勝手に師と仰いでいる早稲田大学教授の国文学者・石原千秋先生が提唱されている「『物語の型』を掴む」こと(「秘伝 中学入試国語読解法」等の著書で紹介されている)を大問3対策の根幹に据えている。長くなってしまうので詳細は割愛するが、簡単に言えば小説(本文)を1文で「○○が、~~する物語」や「○○が、~~になる物語」のようにまとめるのである。そして、都立共通問題の出題は決まって「ポジティブに変化する物語」だと知っておくとよい。今回であれば、「亜紗が、離れてしまったとしても仲間は仲間のままだと実感する物語」くらいの物語抽出をする。この物語の型に沿って解く設問が例年2問程度ある。今年度は問3~5の3問がこれに該当すると見てよいだろう。選択肢も素直であり、間違える余地がない。都立入試問題が簡単なこともあり、この物語抽出を無意識にやっている(できている)受験生が大半だと感じている。しかし、大問3ができずに悩むことがあれば、是非取り入れてもらいたいアプローチだ。
そして、注意したいのは、感情移入して「もし自分なら○○と感じるから、正解は☐」という思い込みで解いては絶対にいけないということ。都立入試では、本文の描写や会話文に根拠が明記されていることが少なくないし、今年度はまさにそのような出題であった(だから易しいのだが)。「物語の型」に沿って行間を読む必要がほぼなかったことで、満点を取りやすかった。なお、今年度の問1のような「表現について」問われる設問は、都立高校で毎年出題されるので、苦手とする受験生は攻略法を習得しておかなくてはいけない(標準的な塾講師であれば、間違いなく指導しているはずだ)。
大問4:標準
「三項表象の理解」等、馴染みのない言葉が登場して抽象的な概念が論じられているため、例年よりも難しい印象を受けるが、実際は相当易しい。というのは、中学生が読んでも(ひょっとすると小学生が読んでも)十分に理解できる程度に、適切な箇所に実にわかりやすい平易な具体例が提示され続けるからである。読者を一人たりとも置き去りにしないという筆者の執念さえ感じる丁寧な文章には誤読の余地がない。つまり、入試問題として出題するには、良文すぎるのだ。底意地の悪い紛らわしい選択肢を仕込むなどの悪問を作らない限り全員が正解してしまう易しすぎる入試問題となる。そして、今年度もそのような悪問は存在しない。
高校入試問題として機能しそうなのは問4くらいだ。この問4は良文の隙をついて作られた非常によい問題だと感じた。おそらく筆者は意図的に最終段落だけ「置き去りの読者」を生み出している。この部分を全読者に伝わるように語れば、文章がいっきに陳腐になるからだと思う(確信はないが)。余談ながら、執筆者は問題を解きながら、この問4に「重要・易」とマークした。このマークは、読解力によって出来が分かれそうな重要問題(差がつく問題)だが、選択肢は易しく作ってくれているから読めている人ならできるはず、くらいの意味だ。このような問題こそできてほしいと思い、受験生を指導している。しかし、この問4のせいでこの大問の満点を逃した塾生が半数近くもいた(もちろん満点の塾生も結構いたが)。講師として非常に反省させられた問題である。
公立高校の入試問題として、出題者が正答率を調整するために「奇問」「悪問」を仕込むことは絶対に避けてほしい。その意味で、近年の都立入試はきわめて良心的である。しかし、そうであれば、もう少し適度な悪文を使ってはどうだろうか。良文でも、せめて大人の読者を想定した具体例で書かれた文章の方が適切だ。この程度の良文でも読み取れない受験生をふるいにかけることのみを目的とするならば、現状でもよいが、それでは90点以上の受験生が量産されてしまう。
なお、作文のテーマは非常に書きやすく、困った受験生はいなかったと思われる。
大問5:易
この大問に関しては、出典元に限りがあるのは理解するが、それにしても短いスパンで鴨長明が再出題された。3年前の2021年度も鴨長明「方丈記」「無名抄」の出題だった。受験生は基本的にはあまり気にしていないし、今年度の問題においては、解くうえで背景知識がプラスに働かくことはなさそうではある。しかし、年度によっては作者や作品の背景を知っていれば読みやすくなることもある。過去問題を演習する中で、頻出のものは文学史として若干触れておいた方がよいと個人的には考えている。中には社会の歴史で出題されるようなものもあり、決して無駄にならない。
さて、設問について。
これほど易しかった回は、あまり記憶にない。
毎年、記していることだが、古文を読む能力は一切問われていない。訳と照らし合わせるだけの「秒で解く」問題が1題あるだけなので、古文アレルギーで敬遠することのないようにしてほしい(今年度は問4)。これは多くの受験生が1分とかからずに正解しているはずだ(本当に数秒で解いた人もいたかもしれない)。問1・3は誤っている選択肢のどこが誤っているのか、確信を持って指摘できる問題であり、問2も「そういうの」の指示語を読み取って瞬殺できるはずだ。
問5は文法問題であり、3年連続で識別問題となった。昨年も記したが、識別問題が当面は定着したと考えて対策すべきである。それ以前は修飾関係を問う文法問題が頻出で、副詞を中心に注意を払う必要があったが、今は用言の活用、助詞・助動詞に注意を払いたい。当塾では今回出題された「が」の識別も含めて助詞を中心に直前対策を行ったが、残念ながら対策の必要がないほど易しい出題であった。正答率90%超確実の入学者選抜の機能を果たさないこの問題の出題意図は謎だ。できなかった人は最後の問題までたどり着けなかった時間切れの人だけではなかろうか(今年度の問題であれば、そのような人もほぼいないと思うが)。この5問(25点)は、楽勝すぎるだろう。全問正解者続出のはずだ。
大問5について、これからの受験生へのアドバイスを3点挙げる。
①この大問は古文が苦手でも問題ない。「難しそう」と思って避けないこと。むしろ、安定して簡単に解けるのはこの大問5であると心得よ。
②秒で解ける問題多いので、残り時間が少なくなっていても、冷静に。
③確実に点を取るためには傍線部とその周辺だけ読むというやり方はダメ(大問3・4も同様だが)。きちんと読みさえすれば、絶対に取れる問題で失点すると合否にかかわる。

理科 易 予想平均点67点
例年同様の大問構成で、大問1、2がいわゆる小問集合、大問3以降は順に地学、生物、化学、物理と続いている。軽微な変更として記述問題が昨年度1問だったのに対して2問に増加した点と昨年は4問出題された完答式問題が今年度は1問だった点である。解くうえでこの変更は非常に軽微であるが、平均点を大きく引き上げる要因となろう。
計算処理を多く求める難解な問題が複数出題された一方で、ほぼ全員が正解できるような設問も多くあったことから得点の分布は狭くなっていると考えられる。また4択の問題が22問に増加(昨年は17問)したこともあり予想平均点は67点。当塾の塾生の自己採点結果の平均点は81.4点であった。
近年の理科の問題傾向として文章量や情報量が増加し、正しく読み取り処理する能力が求められるようになっている。当塾塾生の自己採点結果の平均点81.4点と非常に高かったのは、失点を最小限に防ぐことができたことによると思われる。塾生の解答を設問別に見てみると点数の取り方に特徴がある。全体の正答率が低そうな難易度の高いと思われる問題での正答率は高くないが、読み間違いや勘違いによる失点がとても少ない。覚えるべき暗記事項を漏れなく入れることは言うまでもなく重要であるが、その知識を使ってミスなく回答する練習を繰り返したことが奏功した。
大問1:易
例年通りの小問集合が6問。問2は熱量(J)の公式を覚えていないと解けない問題だが決して難しくはない。受験生であれば覚えているべき公式の一つである。他の問題も非常に簡単な知識があれば解けるものや、ほとんど知識なしに解ける簡単な設問ばかりで満点を取りたい内容だった。
大問2:標準
例年通りレポートをヒントに解く小問集合4題。大問1と同様に例年同様の典型的な問題が並んだが、問2のクジャク石の粉に含まれる銅の割合を求める問題が少し難しく、受験生の頭を悩ませ時間を浪費させたことだろう。
大問3:標準
2の記述問題は「太陽の見かけ上の動く速さについてどのようなことが分かるか」という問いに答えられたかが重要で、理由を含めて書けという指示に従って「~ということが分かる」と書ければ内容自体は難しくない。問3や問4は図形を見る力や空間把握能力が問われる問題のように見えるが、それ以上に資料や問題文の膨大な文章を正しく読解し読み取る力が求められている。
大問4:易
実験に関する文章量や情報量は多いが、設問が非常に簡単で実験について目を通す必要もない問題ばかり。実際に実験の手順や結果は完全に無視しても難なく全問正解できる設問しか存在しない。
大問5:やや難
問1の電解質の問題は実験結果を見れば簡単に正解できる易しい問題だったが、問2以降は得点の取りにくい問題が続いた。特に問4は非常に難易度の高い計算の問題で正しく正解を求められた受験生は少ないだろう。
大問6:標準
計算の必要な設問もあったが実験結果も分かりやすく難しくはない。
斜面を下る台車について運動の様子や力のはたらきかたエネルギーの移り変わりについて正しく理解していれば全く難しくない設問であった。

社会 例年並み 予想平均点56点
H28年度を最後に出題がなかった歴史の論述問題が復活し、論述問題は日本地理・歴史・公民の3問に増加したことが形式上最大の変化だった。難易度の評価は「例年並み」である。平均点は昨年度(55.6点)と大して変わらないと思われる。しかし、得点分布には大きな変化あるはずだ。すなわち、今年度は差がつきやすいテストになっている。「上位にとっては易化、下位にとっては難化」という表現がより正しい。自校作成校などの上位校では90点以上が続出してあまり差がつかない高得点勝負になっているはずだが、中堅校では大崩れの受験生と高得点の受験生の両方が発生しており社会で明暗が分かれる入試になった可能性が高い。
まずは、昨年度の出題概要を振り返ってみよう。昨年度は多くの受験生が勘で解くしかないであろう「奇問」「難問」が複数存在した。そのことにより、90点以上の受験生が1%を切るという異常事態となった。都立高校入試史上、最も社会の平均点が低かった一昨年度(平均点49.2点)でも、90点以上の受験生が2%超いたことを考えれば、昨年度は明らかにおかしな問題が紛れ込んでいたということがわかる。一方で、例年正答率が50%を下回る問題が並ぶ地理が易化していたことで、「最低限」の得点を確保できた受験生は多かった。したがって、昨年度は標準偏差が比較的小さい「差がつきにくい」問題だった。
では、今年度はどうだったかといえば、全員ができない「奇問」「難問」は1問もなくなったが、「誰でもできそうな」易しすぎる設問は減った(あるにはある)。つまり、「都立の社会ってこんな感じ」という差がつく良問がずらりと並んでいるのである。上位層は、「取れない問題が全くない。易化した」と確信したはずだ。一方で、下位層では完答式の設問が例年どおり多いこともあり、50点(ヘタしたら40点)を取ることさえ厳しく感じた人も結構いたと思われる。
社会が得意な人が周りにいる受験生は、そのコメントや自己採点結果を聞いて落ち込んでしまったかもしれないが、平均的なレベルの受験生にとっては、そこまで易しいものではない。引き続き社会が5教科の中で最低平均点であると確信している。
今年度の社会は、直近5~6年間で出題されている過去問題と重なる問題が異常と言えるほど多かった。もちろん、例年もそのような問題は多い。しかし、今年度は例年のレベルではないほどに多い。例を挙げれば、「ポルダー」「シラス台地」「サンフランシスコ平和条約/石油危機/冷戦終結」「平等権条文」「国の歳入/消費税」「フランス革命」「森鷗外」「世界金融危機」。これでもまだ全てではない。「過去問題をやったけど、そんなに出ていなかった」と思われるかもしれないが、確実に出ている。例えば、森鷗外であれば2019年度(5年前)に「明治時代に我が国から(ドイツに)留学した医学者」として同じ大問6の問1で出ている。他のヒントで解けるので、多くの受験生はこの医学者として誰がいるか確認することもなくスルーしているのだが、実はそこまで学習すると全く違った成果が得られる。当塾では12~2月に「都立過去問講座」を開講しており、その水準まで毎年解説している。直前の2月に入ってからの授業で、「ドイツ留学した医学者として森鷗外を挙げ、帰国後『舞姫』執筆」まで解説した。塾生の過去問復習ノートには「森鷗外 ドイツ留学」と書かれているのは、ノートチェックの際に確認している。あまりに過去問講座の内容から出題されていたので、「入試問題が先生に漏れていると思って、試験中焦りました」という冗談のような感想を言う塾生さえいた。これは執筆者が問題予想を的中させたと自慢したいのではない。あくまでも、過去問題を丁寧に解説し、関連事項まで覚えてもらえれば、今年度の出題内容はほぼカバーできていたということだ。今年度ほどではないが、毎年そのような問題がかなり存在する。なお、執筆者は、講師として入試問題予想をすることを基本的に自重している。「当たった/外れたという一種の運で合否が決まる」と受験生に思ってほしくないからだ。出会った問題に誠実に取り組めば、結果につながるのだと思ってほしいし、「ヤマを張るのではなく、できることは全てやる」という姿勢で学んでほしいと思っている。幸い、都立は「一度出た問題は出ない」ということではなく、「何度も同じものが出る」入試問題になっている。結果、毎年のように「直前の授業でやった○○が出ました」と言われている。繰り返すが、これは予想しているのではない。過去問題で出ているものが、再出題されているのだ。過去問題は、腕試し的に解いて終わりにしてはもったいない。過去問題の復習にこそ本番の点数が眠っているということを是非知っていただきたい。
ちなみに、当塾の自己採点平均点は75.5点だった。この問題ならば、80点くらいになっていても不思議はないというだけの指導をしてきたつもりだし、塾生も大いに努力してくれた。論述問題についてやや保守的に採点しているので、実際はもう少し上振れていると信じたい。この場を借りて塾生に謝りたいのは、大問1問1(地形図問題)と論述問題についてだ。今年度の塾生については、これらが比較的弱い人が多いことを認識していた(特に地形図問題)にもかかわらず、他教科も含めた他の学習メニューとの兼ね合いで指導を徹底し切れなかった。当該4問について、執筆者の不徹底な指導の影響があった答案も自己採点状況から確認された。この点については、本当に申し訳なかった。
以下、問題別にコメントする。
大問1 やや難
問1地理(地形図)、問2歴史、問3公民という定番の構成である。問2の歴史は地図で出題されることも多いが、問2・3ともに今回は一問一答系の用語選択問題だった。どれも基本的な問題ではあるが、全問正解できた受験生は意外と少ないとみている。問1は、地図が苦手な受験生には難しめ。立体交差に着目する、距離に留意するなどアプローチは複数あるが、複数の情報を整理する能力が必要だ。社会全設問中、当塾で最低正答率となったのは実はこの設問だった(唯一正答率50%を下回った)。問2・3も誤答の「武家諸法度」「臨時会」を結構な割合の受験生が選んでいるだろう。当塾でも相当に注意を促しているようなところからの出題だったにもかかわらず、2問とも全員正解とはならなかった。大問1としては、例年よりも難しいとみている。
大問2 並~やや易
全体として例年どおりやや難しい問題が並ぶが、「無理ゲー問題」が一切なく極めて良心的な出題内容。3問とも正答率は40%程度と想定する。しかし、当塾では全問正解者が半数を上回る。過去問題演習が奏功した。問1「コーヒーの生産量5位=エチオピア」だが、2021年度にコーヒーと茶の生産量に関連する出題があった。その際に、コーヒーと茶の統計データをチェックしている。確認テストで上位4か国しか書かせていなかったことが悔やまれるが、大半の塾生は正解した。無論、気候のヒントから雨温図を選び、その気候になる低緯度で高地のエチオピアを選ぶという解法でも全く問題ない。問2は「柑橘類やオリーブ=イタリア」「中央部の高原でとうもろこし=メキシコ」が出題歴あり。その他「バナナ」「米が主食」等もヒントになる。余談ながら、バングラデシュは近年結構出題されている印象だ。問3は「ポルダー=オランダ」を知っていれば一撃だ。これは2018年度大問6で出題があり、当塾では全員が正解した。ヒント文の「同じ地域の政治・経済統合体=EU」を特定できれば、ヒント文の読解だけで十分に正解にたどり着けるが。
大問3 例年並み~やや易
完全に例年どおりであるが、正答率は問1が65%程度、問2が40%程度と予想する。問1は、「茶=静岡」「やませ=東北」「シラス台地=鹿児島」あたりが都立高校頻出なので、易しい部類だろう。当塾では「茶=鹿児島」と思い込んだ生徒が1名だけ失点したが、その他の塾生は全員正解していた。確かに鹿児島は茶の生産量2位だ・・・。問2は、当塾で「算数問題」と分類している問題だ。「人口に占める・・・・の割合は、1割以上」だけで、絞れる。あとは日本の主要都市の人口は概数で把握しておくことを強くお勧めしたい。当塾での取り組みを紹介すると、20個の政令指定都市全て書くテストを入試直前にしている。加えて、そのうち人口100万人以上の都市を全て書かせるテストもした。統計データを見るのが好きな受験生や見る習慣がある受験生が絶対的に有利だ。塾内では、「人口97万人」だけで千葉市だとわかった生徒も結構いたはずだ。他のアプローチでも正解できるが、ヒント文の読み取りが苦手な受験生は統計データの知識を入れておいた方が無難である。論述は「コンパクトシティ」に関するものだが、問題で示されことを整理して書くというもので、いかにも都立入試らしい。読み取る図もわかりやすいので、多くの受験生はできたはずだ。
大問4 やや難
問1・3・4は、定番の時代(年代)整序問題である。毎年正答率が低い設問であるが、ここでかなり差ができる。できる人は当然のように全問正解するからだ。今年度も当塾では全問正解者が8割以上を占めるボーナスステージとなった。どのような学習をすればよいかというと、歴史を学習する際に時代ごとに重要事項をまとめること、近現代を中心に重要年代を覚えることにつきる。そして、一般的な一問一答の用語テストだけでなく、用語・人物が示されていて時代を解答するという形式のテストを行うことが極めて有効だ。通っている塾でそのような対策をしてくれない場合は、自分でワードカードを作って裏に時代(物によっては年代も)を書き込んでチェックするとよいだろう。
問2の論述は、驚いた。H28年度を最後に歴史の論述は出題がなく、全体で論述問題は2題で定着していたからだ。都立高校で採点ミスが発生して大ニュースとなって以来、論述問題が増加することはなかったので、大きな転換だと言える。問題で示されていることをほぼ写して答案にすればよいのだが、今年度の受験生は歴史の論述問題をここで初めて見たこともあり、何を書いていいのか大いに戸惑ったようである。ただし、苦し紛れでも書いていれば「役割」の部分点は出る答案になっているはずだ。この問題が大勢に影響を及ぼすことはない。
大問5 例年並み
問1はある意味で今年度最も驚いた問題だ。基本的人権が示されて憲法条文を選ぶという超ド定番の問題なのが、なんと出題が「平等権」なのである。さすがに誰でもできてしまうし、なんと2018年度に全く同じ問題がでているのだ。ちなみ、そのときは正答率94.5%という異常値を叩き出している。2018年度の出題を失敗と認識していなかったのだろうか。今回も95%前後の正答率だろう。さすがに出題意図がわからない(平均点のかさ上げ?)。
問2は国の歳入と税目別割合を問う出題で、類題はH29年度と2019年度に出ている。これらの過去問題を復習する際に、消費税の導入・税率引き上げの年代はおさえておいてよい。また、授業では、消費増税によって税収が最大の税目が消費税になったという最近のトピックも授業で触れた。公債金が4割程度なのも知っているはずなので、塾生は簡単に解けた人が多かったと思う。一般的には、ヒント文から丁寧に割合計算をする「算数問題」として処理するのが王道だと思うが、この割合計算を苦手とする中学生は残念ながら多い。いずれにせよ、国の財政データの概要は歳入と歳出の両方を把握しておきたい。
問3は都立高校でやっと出題されたSDGsである。ただ、実はこれが初登場ではない。2018年度の問題で年表中に出ているのだ。他の道府県公立高校ではSDGsの出題が相次いでいる中で東京都はこれまで直接問う設問は出ていなかった。2018年度の問題を解説した際に「SDGs=2015年採択」は板書している。ようやく出したか、という感想である。しかし、問題文からそれがSDGsのことだとわからない受験生がいた可能性も否定できない。当塾でも残念ながら全員正解はならず、1名間違っていた。問4はきわめて書きやすい論述問題だった。
大問6 易
問1いつも通りの出題。「1789年フランス革命」は2019年度とH28年度で出題歴あり。「1871年ドイツ帝国統一」も2022年度に「ドイツ帝国・ビスマルク」が出ているため、過去問を丁寧に学習すれば習得できている。「森鷗外ドイツ留学」は前述のとおりである。「日英同盟」も難しくない。そもそも「英文学」なのだからイギリスだろうし・・・
今年度は、「ドイツ/フランス/イギリス」というヨーロッパ主要3国からの出題だったという意味では、若干楽だったかもしれない。問2は「世界金融危機=2008年」を暗記させていた当塾の塾生は全員正解した。かなり易しい部類の設問であったかと思うが、講師として指導上留意していることを述べたい。まず、これは「歴史」として教える必要があるということ。一部の塾講師の中には「最近のことだし、常識として知っているよね」と安易に考えている者もいるようだが、非常に危険だ。これは今年の受験生が生まれた年であり、当然記憶にない。別の例を挙げると、当塾で都立受験対策を本格的に開始するタイミング(夏頃)では「高度経済成長」と「バブル経済」が同じものだと勘違いしている生徒が例年半数くらいはいる。昭和生まれの執筆者からすれば、衝撃的なことだが、これが中学生から見えている世界なのだ。大人にとって常識でも、学習内容として取り上げることは必須だ。そして、「リーマンショック」という言葉でしか馴染みがない生徒もよくいるので、要注意である。社会科の用語として「世界金融危機」をインプットする。これは「9.11=同時多発テロ」などでも言えることだ。受験生の多くは、問題文を読んで「あ、あれのことね」とリアクションするのに障壁があるので、これも大人の常識で見ないことが肝要である。問3はヒント文とグラフを読むだけの問題であり、拍子抜けした。せめてヒント文から「アフリカ州」を特定しないと正解できないような出題をしないと入試問題として資格がないように思うのだが。「アフリカの年=1960年」をしっかりと覚えている当塾塾生が浮かばれない。
最後に
長文を読んでいただいてありがとうございました。当塾での取り組みも企業秘密に触れない程度に開陳させていただいた。かなり細かいことまでやっていると思った方もいたかもしれない。しかし、当塾で本格的に都立入試対策をスタートさせる夏休み序盤では、日本白地図で47都道府県及びその県庁所在地を全て書ける人や世界白地図でフランス・ドイツを正しく指し示せる人は半数もいない。塾生には、そこから相当に頑張っていただくわけだが、正しい学習メニューで夏と冬の勉強をしっかりやれば、それで合格に必要な点数はおそらく取れる。都立高校入試では、社会の平均点が5教科中最低という年が多い。多くの受験生が「正しい学習メニュー」を見極められずに、苦手意識の中で立ちすくんでいるのだと思う。それは非常に残念なことだ。周りができないのであれば、社会で点数を取ってしまえば、志望校にぐっと近づくのだから。当塾に通える範囲にお住まいでお困りの方は、是非相談に来てほしい(別に入塾しなくてもいいですよ!)。通える範囲にお住まいでない方は、地図帳と年表に慣れ親しむことから始めてみよう。それがきっと志望校合格への第一歩です。