当学院の講師陣による平成31年度都立高校入試問題(共通問題)分析を掲載いたします。
出題形式・出題傾向・難易度・必要な対策等を分析しております。
都立高校入試対策で地域No1を目指し、私たちは日々研究を重ねております。その研究の一環として毎年行っているのがこの都立高校入試問題分析です。分析から導き出される「都立高校入試に有効な対策」については、塾内で実施する説明会や面談等でご案内するとともに、日々の授業・講座に反映しております。

○英語 難化
昨年度は非常に易しい出題内容であり、平均点が68.0点と15年ぶりの高得点を記録した。
その昨年度と比較すれば若干難化したものの、その他の年度と比較すれば総じて易しめの問題と言える。
予想平均点は60点台前半。
上位層にとっては崩れることなく得点しやすい出題であり、上位層と下位層の得点のばらつきが出ていると考えられる。
使われている英語は標準的な水準を維持しており、選択肢での言い換えにも紛らわしいものはほとんど含まれていない。したがって、上位層では見込んでいた得点を実力どおり取れた受験生が大部分であろう。一方で、一般常識や情報処理能力を問われる問題が例年よりも多く、「英語力」以外の能力の影響が大きかった。そのため、中位・下位層では事前に想定していた点数から大きく上下しやすくなっている。特に大問2でこの傾向が顕著に見られるため、大問2を得点源としてアテにしていた層(大問3・4での得点が困難な下位層)への負の影響が大きい。

以下、大問別に分析する。
大問1(リスニング):オーソドックスで難易度も例年並み。ただし、毎年のことながら、実際の受験生の感想として「速かった」という声が圧倒的である。市販されている過去問題の付属CDで練習しているだけだと本番のスピードについていけないことが明らかである。なお、当塾では再生速度を上げたトレーニングを入試前に実施した(その効果は当記事を執筆時点で未検証)。
大問2:1・2に「計算問題」が入りこみ、英語の力を測るテスト問題としてその適性に疑問を抱かざるを得ない。3は英作文も含めて標準的な出題。
大問3:一部に出題意図の変更が見られた。すなわち、細部を問う出題ではなく文章全体の理解を問う出題へのシフトである。しかしながら、この大問は15年ほど前から広く普及した環境問題におけるキーワードである「3R」というものを知っていたかどうかで勝負が分かれしまうものとなっており、「英語」というよりも「現代社会」「一般常識」の力が問われてしまっている。英語が苦手でも社会常識力で高得点となってしまうケースも想定される。
大問4:問題構成は例年どおり。今年度は選択肢が易しく、解きやすくなっている。

英語の最後に、都立高校入試に関する重大ニュースに触れておきたい。先日、東京都教育委員会より「東京都中学校英語スピーキングテスト」が来年度より中学3年生を対象に実施される方針が発表された(来年度は抽出校のみの実施)。そして、このスピーキングテストが3年後より入学選抜に活用される予定である。都立高校入試もついに「4技能」化の時を迎えている。さらに、新指導要領の全面実施後は必要語彙数も大幅に増加する予定である。
当ページ読者の皆さまにおかれましては、これから3年で「英語の入試が変わる」ということをご理解ください。

○数学 やや難化
大問構成・出題形式は昨年度から変更なし。従来どおりの都立入試問題であったと言える。
大問3・4で例年以上の高正答率が想定され、全体としては易しめの出題内容であった。
昨年度は非常に易しく、平均点が66.5点と歴史的高得点を記録した(東京都教育委員会が統計データの公表を開始した平成15年度入試以降、最高得点)。今年度も昨年度の平均点に迫る高得点となる見通しである。予想平均点は64点!!
大問2の問2(証明)は非常に難しく近年まれに見る水準の難易度であった。一方で、例年低い正答率となる「大問3の問2➁」「大問4の問2➁」「大問5の問2」は上位層は解けてよい水準の難易度に落ち着いており、上位校の受験者はこの3問のうち1~2問は正答することが求められるだろう。

以下、大問別に分析する。
大問1(易しい小問集合):例年同様、取りこぼしなく全て正答することが求められる水準。問7(確率)で一部戸惑った受験生がいたと推察され、昨年度から若干正答率が低下する見込み。問8(円周角)・問9(作図)も難なく正解したい水準の易しい問題だが、昨年度と比較すれば若干正答率が低下していると思われる。
大問2(文字式):前述のとおり、問2(証明)は非常に難しい出題であり、部分点さえ取れていない受験生が続出しているはずである。ただし、問1は半数以上の受験生が正答していると思われ、中堅以上の志望者はとらなければならない問題である。
大問3(関数):問1は昨年度は4択問題であったものが、記述式に変更された。ただし、昨年度も今年度も問題自体が大変易しく、ほとんど影響がなかったはずである。問2①は与えられた条件の場合の1次関数を求める例年どおりの出題で難易度は低い。問1・問2①の2問に関しては、確実に正答することが多くの受験生に求められる。問2➁も例年どおり。難易度の高い問題であるが、定石どおりに座標を文字で置いて条件に合致するよう方程式を立てることで求めることができる。ごくオーソドックスな解法であり、上位校の受験生は正答したい問題である。
大問4(平面図形):問1は例年どおり角度を文字を使って表す4択問題。今年度は昨年度と比較しても易しかった。平行四辺形の対角が等しいことさえわかっていれば、難なく正解にたどり着くことができる。当然、全受験生に正解が求められる問題と言える。問2①は相似の証明。三角形の合同か相似の証明が必ず出題されるのだが、今年度の問題はかなり書きやすい部類に入る。平行線の性質を利用して2組の等しい角を示すだけであり、相似条件等の基本事項が把握できていれば書けて当然の難易度である。問2➁正しく補助線を引けるかどうかが勝負の分かれ目となる問題であり、中堅層以下は落としてもよい問題と言える。
大問5(立体図形):図形も設問も平成29年度入試と非常に似ており、過去問題で丁寧な学習をしてきた受験生にとっては幸運であった。特に問2は解法もそのままであり、過去問題の演習の質が問われる。ただし、問2は難問が出題されることになっており、立体図形が苦手な受験生の中には、そもそも「大問5の問2は捨て問」として試験に臨んでいた者もいただろう。上位校受験者を除いては、失点していてもやむを得ない問題である。

○国語 易化
近年の国語は平均点が65点を上回る易しい出題内容が続いている。昨年度はやや難化したものの、今年度は易化しており「国語の難易度は低く他教科に比較して平均点が高い」という大きな傾向に変化がなかった。漢字・作文以外は4択問題であり、出題形式に大きな変更はなかった。従来から変更のない点ではあるが、読解の大問が3問あること、作文(200字)があることから、スピード不足の受験生は苦戦が強いられる。難しくはないだけに、読むスピードと問題処理速度が問われるのが近年の都立国語なのである。
総じて簡単な問題で構成されており、平均点は昨年度から上昇することが予想される。
予想平均点は70点前後。

以下、大問別に分析する。
大問1・2(漢字):標準的な水準。例年よりも難しめの出題も含まれていたようにも感じたが、当塾塾生の自己採点では全問正解者が続出し、難化傾向を全く確認できなかった。その事実から、中堅校以上の受験者であれば全問正解したい。「書き」よりも「読み」で差がついた可能性が高い。「読み」が苦手な受験生には不利だったか。
大問3(文学的文章):場面設定が従来の都立高校入試らしくない文章であった。文章自体はやや長かったものの、設問の選択肢に紛らわしさを感じるものはほぼなく、多くの受験生が「1問ミス」くらいでは切り抜けたはずである。人並みのコミュニケーション力があれば感覚でも正解を選べる問題が多く、「読解」力ではなく単純に読むスピードが重要であった。
大問4(説明的文章):文章自体は短かったが、中学生には読みにくく論旨を把握できなかった受験生も多かったと推測する。ただ、設問自体は大変易しいものであった。傍線部の直前に解答の根拠があり、紛らわしい選択肢がない問題が多かったためである。つまり、文章の大意把握ができていなくても得点できてしまうという出題内容であった。ここ2年は、問1で解答根拠が傍線部の後ろにあって論旨の理解を問う出題が続いていたが、それがなくなり「傍線部とその直前」で勝負できてしまう問題が並ぶことになった。学力下位層でも対応しやすい問題が多かったと言える。作文は具体的体験談を含めて書きやすいテーマで、7点程度の部分点が出る答案は難なく書けただろう。ただし、大意把握ができていないために、「本文の内容を踏まえていない」という点で減点され、10点満点の答案はあまり出なかったのではないか(各高校が設定する採点基準によるが)。
大問5(古典を含む対話文):修飾関係を問う文法問題が出題されることが多かったが、今年度は出題されなかった。一方で、昨年度出題が途絶えた仮名遣いを問う出題が復活した。この大問についても素直に選択肢を選べる易しい出題が多かった。「古典を含む文章」としての出題であるが、実質的には古文を読む必要がない(古文を読むと時間不足になる受験生が多いだろう)。古文についての問4・5は古文を読まずにそれぞれ10秒で解答が可能である。問4(仮名遣いの問題)は、傍線部のみ見れば即選べる。問5は現代語訳を先に読み、古文の対応箇所を探す問題である。正しい解法で臨めば、今年度は特に間違える余地のない出題。ここで正答できていない人は、時間が足りなかった人ではないかと思われる。試験問題の最後に短時間で得点可能な設問があるだけに、試験時間の効率的な使い方、時間戦略が合否をわけると言える。

○理科 易化
大問構成や問題数に変化はなく、概ね昨年度と変わらない出題内容であった。
減少傾向にある論述問題は、ついに実質的になくなった。
「大問3(地学分野)問3(震源からの距離を求める問題)」「大問4(生物分野)の問2・3(遺伝に関する問題)」「大問5(化学分野)の問4(化学反応の質量に関する問題)」で、低い正答率が想定されるものの例年でもごく普通に出題される水準である。難問と言うべき問題、見慣れない奇問の類は一切出題されておらず、しっかりと準備をしていた受験生にとっては対処しやすい問題であった。
特に、直近5年の過去問題の類題と呼べる問題が多く、過去問題を使った学習を丁寧に行った受験生には大変有利に働いた。「都立高校入試過去問講座」を実施している当塾塾生は一様に高得点であった。過去問題に触れていない受験生はいないだろうが、「解いて得点を出すだけ」では不十分である。そこで出会った問題を丁寧に復習し、疑問点を潰しておくこと・覚えるべきことはしっかりと覚えることが肝要であることが改めて示された。
昨年度(平均点61.5点)の問題と比較してやや易しく、若干の平均点上昇が予想される。
予想平均点は65点前後。

○社会 難化
大問構成や論述問題が2題(10点分)である点などは昨年度と同様。
昨年度から増加傾向が顕著である「完答式」の設問が今年度は更に増加し、10題(50点分)に達した。この「完答式」の設問数増加は、学力層を問わず得点を押し下げる要因となっている。そのうえで今年度は問われている知識水準が高い問題も散見された。
従来からの都立高校入試の傾向どおりではあるものの、グラフ等統計資料の読み取りの力を問う出題と地図を絡めた出題が今年度も大変多かった。都立高校入試対策としては、引き続き特に注力したい点であり、歴史の学習においても地図で位置を確認するなどの習慣をつけたい。
昨年度(平均点61.5点)の問題と比較して難易度は非常に高く、平均点の大幅な下降が予想される。
予想平均点は50点台前半。

【全体】
昨年度は5教科合計の平均点が323点であり、歴史的高水準となった。これは、東京都教育委員会が統計データの公表を開始した平成15年度入試以降、最も高い平均点であるばかりか、2番目に平均点の高かった平成27年度(平均309.5点)を約14点も上回る圧倒的なものであった。
今年度については、昨年度と比較をすると難化しており平均点は下降する。
しかしながら、社会の著しい難化を除いては、得点しやすい教科が多く、比較的高得点勝負の入試となったはずである。
平均点は310点を予想する。
平成後半の15年間で、昨年度に次いで平均点の高かった平成27年度(平均309.5点)に近い平均点となるだろう。
自己採点結果でボーダーライン周辺にいる受験生は、ある程度の覚悟を持って合格発表に臨んでください。

※当ページに記載の内容は、当塾独自の分析です。分析者個人の主観的意見も含まれておりますので、ご了承ください。